【囲繞地・袋地の売却方法】高く売るための5つのコツを徹底解説!

囲繞地 売却
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囲繞地や袋地は、囲繞地通行権という権利関係があり、不動産業界では特殊な土地の一つとして扱われています。

そのため、売りに出しても「なかなか買い手が見つからない…」という悩みを抱えている方も少なくありません。

そこで、今回は囲繞地と袋地の関係性、囲繞地を高く売るコツについて解説します。

囲繞地とは

囲繞地
囲繞地(いにょうち)とは、他人の土地を取り囲んでいる土地です。これに対して、囲繞地に取り囲まれている土地は袋地(ふくろち)と呼ばれ、囲繞地に必ず隣接しています。

他人の土地を取り囲んでいる土地が「囲繞地」

囲繞地は、他人の土地を取り囲み、道路と隔てている土地のことです。複数の土地が隣接して繋がっており、囲繞地の中心に袋地が位置しています。

囲繞地に囲まれている土地が「袋地」

囲繞地に対して、囲繞地に取り囲まれている土地を袋地と言います。袋地の住人は、公道に出るために必ず囲繞地のどこかを通らなければなりません。

道路と隔てられているため、建築基準法43条に規定される接道義務を満たしておらず、建て替え・増築が禁止される土地の一種です。

建て替えできない土地については以下の記事で詳細を解説しています。

建て替えできない土地(再建築不可物件)の定義は?建て替え可能にする5つの方法も解説

2019.08.03

袋地の住人が持つ囲繞地通行権とは

囲繞地通行権
袋地の住人には、道路を利用するために囲繞地を通行する権利が与えられています。これが囲繞地通行権と呼ばれる規定です。

民法に定められているルールのため、囲繞地の住人の承諾がなくても通行が可能です。

袋地の住人は囲繞地を通る権利を持っている

袋地の住人にとって、自宅の周りはすべて他人の土地ですが、敷地の外に出るためにはその中を通らなくてはなりません。

袋地の事情を考慮し、民法211条1項に、袋地の住人が囲繞地を通行する権利が定められています。

  • 必要であれば囲繞地に通路を設置することができる
  • 通路幅は最低限に留めなければならない
  • 袋地の住人から償金(通行料)を取ることができる

民法に定められた権利のため、基本的に囲繞地の持ち主は敷地の通行を拒否できません。しかし、この内容からも分かるように、袋地の住人には囲繞地の住人への配慮と補償が求められています。

参照:電子政府の総合窓口 e-GOV|民法211条1項

囲繞地通行権と通行地役権

袋地の住人が囲繞地を通行するための権利は、囲繞地通行権だけではありません。囲繞地の住人と袋地の住人の合意により、通行地役権を設定できます。

通行地役権も囲繞地通行権も、囲繞地を通行する権利だという点では同じものですが、敷地の利用範囲や利用料の面で細かい違いがあります。

囲繞通行権 通行地役権
権利の成立 合意の必要なし 合意により設定
通路に利用できる広さ 必要最低限 合意により自由に取り決め可能
利用料 合意により決定
(無償の場合あり)
合意により決定

囲繞地通行権で利用できる広さは、通行のために使用する最低限です。自動車の駐車など、通行に直接関係のない利用はできません。

どちらの権利でも、利用料は袋地の住人と囲繞地の住人の合意で自由に決定できます。なお、囲繞地通行権を行使する場合、過去の利用状況や、袋地になった理由によっては無償になる可能性もあります。

法律に規定があるとはいえ、自分の敷地を他人が勝手に通るというのは気持ちの良いものではありません。そのため囲繞地の住人に無断で囲繞地通行権を行使するのはトラブルのもとになりやすいです。

通行地役権を設定するのには、このような不要な揉め事を防ぐ効果があります。両者の合意の元、あらかじめ詳細を取り決めて登記しておくことで近隣とのトラブルを防ぐことができるのです。

参照:電子政府の総合窓口 e-GOV|民法280条

袋地の住人から通行料を取れる場合がある

囲繞地通行権を定める民法212条には、袋地の住人の通行料の支払い義務を規定しています。このため、袋地に引っ越してきた住人が、勝手に自分の土地を通行し始めた場合、その住人から通行料を徴収できます。

通行料の支払いは年に1度、両者が合意した金額が支払われます。通行料の金額に関しては法律の規定がありません。話し合いがこじれて裁判になった場合は、土地の貸借価格の相場から算出されます。

囲繞地通行権の土地の通行料は原則有償ですが、以下のようなケースでは無償扱いとなることがあります。

  • 以前から無償で通行を許可されていた
  • もともと一つの土地を分割してできた袋地である

以前から無償での通行を許可されていた場合、通行料ゼロ円で通行地役権が設定されていると見なされます。そのため改めて通行料を請求できない可能性があります。

一つの土地を二つに分筆して袋地が発生した場合も、片割れの土地の所有者は袋地の住人に通行料を請求することはできません。

参照:電子政府の総合窓口 e-GOV|民法212条

囲繞地の相続税評価

囲繞地なんて自分には関係ないと思っていても、実家の相続などで予期せず所有者になってしまうパターンもあります。

そんな時に困るのが土地の相続税問題です。土地の評価額がいくらになるか見当もつかない状態では、相続するかどうかも決められません。

評価額の計算は難しいイメージがありますが、実は相続税の基準となる相続税評価額は、ある程度の目安を自分で計算することができます。

土地の相続税の目安は自分で計算できる

相続税の評価額は、土地の形状や周辺状況に応じて金額が増減します。こういった各種条件を反映させた確定金額は、税理士や司法書士などの専門家に依頼するのが確実ですが、目安金額であれば自分でも計算が可能です。

相続税評価額の計算は以下の2種類の方法が存在します。

  • 路線価を使った計算方法
  • 倍率方式での計算方法

それぞれの算出方法をご紹介します。

路線価を使って算出する場合

路線価とは、相続税評価に利用される土地の評価基準です。土地の評価額は、面している道路ごとに決まっており、この金額から自分の土地の評価額を算出します。

各道路の路線価は国税庁の以下のホームページで公開されています。
国税庁|財産評価基準書路線価図・評価倍率表

最初に相続が発生した年を上部のタブから選び、そこから対象の土地が掲載されているページを開きます。土地の図面には、各道路の路線価が記載されており、土地が面している道路の路線価を元に評価額を計算します。

例えば、対象の土地が面している道路に110Dと記載があるとします。この場合、1平方メートルあたりの価格は110千円(11万円)です。100平方メートルの宅地であれば、相続税評価額の目安は1100万となります。

倍率方式で算出する場合

路線価が設定されていない土地の場合、固定資産税評価額に指定の評価倍率をかけた「倍率方式」で税額を算出します。

路線価の対象は主に市街地や都市部の道路であり、郊外の土地の場合は路線価が設定されていないことがあります。倍率方式の対象エリアは、先述の路線価図に大きく「倍率地域」と記載されています。

相続税評価額を算出するための評価倍率は、路線価図添付されている倍率表から確認できます。
固定資産税評価額が1500万円の土地で、評価倍率1.2倍に設定されている場合、その土地の相続税評価額は1800万円となります。

なお、固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書から確認できます。年に一度送られてくる固定資産税の納税通知書に付属しているので確認してみてください。

参考:国税庁|平成27年分 東京都八王子市の倍率表

囲繞地を売却する5つのコツ

囲繞地 売却
囲繞地は、土地の通行を巡って近隣トラブルになりやすい土地。売りに出した場合も、袋地の住人が日常的に通行することがデメリットとなります。そのため、囲繞地は不動産としての需要がやや低く、流動性も低めです。

ですが、囲繞地でも売却時の工夫次第で高額で売却できる場合もあります。囲繞地を高く売るための5つのコツをご紹介します。

袋地を買い取り合筆する

囲繞地を高く売る手段の一つとして、袋地を購入し、一つの土地として合筆してしまう方法があります。土地を買い取ってしまえば、他人に通行される心配も無くなります。

土地を買い取るのである程度の資金力が必要ですが、土地の面積が増える分、比較的高額での売却が狙えます。

袋地の住人と土地の等価交換を行う

囲繞地の住人と袋地の住人で、お互いの土地の一部を交換する方法です。

囲繞地からは、袋地の住人が通行するのに必要な分の土地を譲渡します。袋地の住人からは、通行用の土地と同じ価値分、袋地の一部を提供してもらいます。土地の売買と比べて費用負担が少ないため、袋地の住人に応じてもらいやすい方法です。

土地の交換には、土地の測量や価格の算出、境界線の位置の決定といった専門的な作業が必要となります。知識に自信のない場合は専門家である土地家屋調査士に調査を依頼することをおすすめします。

敷地の一部を袋地の住人に売る

袋地の住人が通路として使用している部分を買い取ってもらう方法です。囲繞地の通行料が定期的にかかるのは袋地の住人としても煩わしいものなので、資金があれば土地の買取を受けてくれるかもしれません。

土地の一部を売却するため、面積は小さくなりますが、囲繞地状態を解消できるメリットがあります。そのため買い手がつきやすくなるところがポイントです。

なお、囲繞地の通行料が無償になっている場合は断られる可能性が高いので注意が必要です。

不動産の一括査定サイトを利用する

売却を依頼する前に、複数の不動産会社に査定を依頼し、大体の相場を調査しておきましょう。一社のみの査定結果では相場と一致するか不明な上、業者に足元を見られる可能性もあります。その点、複数の業者の査定結果が分かれば、安い売却価格を提示されても強気で対応できます。

WEBの一括査定はあくまで概算ですが、売却交渉のカードの一つとして使えるため利用をおすすめします。

訳あり不動産の買取業者に売却する

囲繞地や袋地、再建築不可物件など、買い手のつきにくい宅地の売買に特化している不動産業者が存在します。普通の不動産業者は訳あり物件の扱いに不慣れなため、適正価格での査定ができない場合があります。

専門業者であれば、独自の販売ルートや活用ノウハウを持っているため、他人の通行権のある土地でも高額での買取が期待できます。一度相談してみると良いでしょう。

まとめ

以上、囲繞地と袋地の関係性、囲繞地の相続税評価、囲繞地を高く売るコツご紹介しました。

囲繞地は、袋地の住人の通行権があるという性質上、隣人とのトラブルを懸念してやや買い手の着きにくい土地です。ですが、ご紹介した方法を利用して囲繞地状態を解消することが可能です。

また、囲繞地状態を解消できない場合も、訳あり不動産の専門業者であればきちんと土地の価値を評価して買い取ってくれます。

不動産の買い取り価格は、業者によって十万円単位で差が出ることも多いです。売却を検討される場合は、訳あり不動産の専門業者も含め、複数の業者から査定を取ってみてください。